夢色タイムマシン

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「嬢ちゃん、嬢ちゃん」 「――ん」  誰かの声にぼんやりと意識が浮上してきて、重い瞼を開けるとそこには――何とも愛くるしい虎のぬいぐるみ。 「ぬいぐるみ? え?」 「俺の名前はぬいぐるみじゃない。確かに可愛らしい姿をしてはいるが、俺としては恥ずかしいからあまりそこには触れてくれるな」  頭に黒いシルクハットを被った二本足で立つ虎のぬいぐるみは、その見た目からは考えられないくらい渋い声と口調で話し始めた。あまりのことに女性は目を見張るばかり。 「俺の名はギラン。嬢ちゃんの名を訊いても?」 「え、ちとせ、です」 「ちとせ。いい名前じゃねえの。んじゃあ嬢ちゃん、早速本題だ」 (名前訊いてきたくせに嬢ちゃん呼びのままなんだ)  ギランはどこから出したのか煙草を咥え、ライターでシュボッと火をつける。ちなみにそのサイズはぬいぐるみのギランに合う、まるでおままごとの付属品みたいに小さいものだ。
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