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「嬢ちゃんは夢日記をつけてるらしいな。夢日記を100日も書いたマメな嬢ちゃんに褒美をやろう。今まで書いた夢日記の中からどれか一つだけ、現実にしてやる」
「……え?」
ちとせは頭が上手く回らず、そう返すのみ。察しの悪いちとせに煙草を丸い手で器用に持ち、俯きながら「かーっ! 話の通じねえ嬢ちゃんだなあ」と首を左右に振る。
「今まで嬢ちゃんが書いた夢日記の内容を一つだけ現実に叶えてやろうってんだよ」
「は? いやいや、そんなの無理に決まってるじゃない」
「そんな小せえ常識で考えちゃ駄目だぜ。こういうときは素直に自分が叶えてほしい夢を言えばいいんだ。あるだろう? 金持ちになった夢や美味いもんをたらふく食う夢。世界一周旅行に行く夢。そういうのだよ」
「自分が叶えてほしい夢……」
その言葉に、ちとせは思い浮かぶ夢があった。もしもあの夢が現実になって、その夢から自分の思うように行動出来たら。そう願ってやまない夢が。
俯いて唇を横にきゅっと結ぶちとせに、ギランはにやりと笑みを浮かべ、今度はまたもやどこから出したのかグラスに手酌で焼酎を注ぎ、ちとせを眺めながらそれを飲み干す。ちなみにやっぱりこのグラスと焼酎のボトルもぬいぐるみサイズである。
「あるみたいだな。叶えてほしい夢が」
「私が、叶えてほしいのは……」
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