1人が本棚に入れています
本棚に追加
やがて遊園地から場面は変わり、ちとせは車に乗っていた。
(この車、この柑橘系の香り、これは)
ちとせが乗っていたのは、一つ年上の元彼の車だった。
運転席に座る元彼の顔は、目元だけが白いチョークで乱暴に塗り潰したようなモザイクで見えなくなっていて、楽しそうに話しかけてくる元彼にちとせは何も返すことが出来ない。
何を言うでもなく助手席に座って窓の外を眺めていると、元彼が膝の上に何かを置いた。視線を移すと、そこにはピンクのおしゃぶりが一つ。
「……っ」
(これは、どうして、あなたがこれをっ? あなたが“これ”を知っているはずないのに)
途端に心臓がざわめいて激しくなる呼吸。胸元を掴みながら咄嗟に元彼の方を見るも、やっぱり顔は見えないまま。ここで以前見た夢は終わっていた。
最初のコメントを投稿しよう!