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本当に記憶にも残らないようなただの雑談だ。
それでいながら今日のこの日、三人で歩いたことを、ふとしたきっかけで思い出すのだろう。
ウキウキと創作意欲に精を出すつばさを横目にしながら、
(あ……)
瞬きの刹那。それは一瞬で。
はるか遠い先の未来、白髪交じりの見覚えのある三人の老婆が視えた。
急に立ちどまった澪を振り返り、二人が呼びかける。
「どうしたの澪? いきなり立ち止まって」
「澪ちゃん、疲れちゃったの?」
「何でもないです。ただ、またこんな風に皆で一緒に会話が出来たらな、と」
「いつでもできるでしょ」と朱葉は気にする風もなく。
「澪ちゃん、変なの」とつばさは首を傾げた。
「そうですね」と澪は口元を綻ばせた。
胸に温かいものを感じながら、ふとした目線の先に、黄色い石蕗の花が咲いていた。
了
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