龍姫の焔

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「そうですか、寂しくなります。特に、龍姫は貴方様のことを慕っておりましたから。しかし、貴方様の道を阻むのも本意ではありませぬ。……今宵は、腕によりをかけて出立の宴を催しましょうぞ」  穏やかな微笑みをたたえる姉に、青年は静かに頭を下げた。  その夜、青年を送る宴は、最後にふさわしく華やかなものとなった。  明朝、屋敷の戸口で見送る二人の姉に背を向け、歩き出す青年。  ただ一つ、少女――龍姫の姿が、宴から今朝までなかったことだけが心残りだった。  重いわだかまりを抱え、洞窟を抜ける青年。やがて、古びた寺が見え、境内に差し掛かった時だった。 「にいさまっ、にいさま!」  振り向くと、着物の裾をたくし上げ、息を切らせて走ってきた龍姫の姿があった。  彼女はそのまま青年のもとへたどり着き、とびこむように彼の足にしがみつく。 「たつ……」 「にいさま、にいさまっ。たつは、たつは!」  昨晩から今まで、どこにいたのだろうか。しかし、顔をあげた少女のまなじりは、まるで一晩泣きはらしたように真っ赤だった――。 「すまぬ、たつよ。ここで、お別れだ」 「いや、いやでございます……」  ふるふると首を振り、しがみついて離れない少女。 「たつは、たつには夢が、ひっく、ございました」  彼女はしゃくりあげながら、もごもごと呟く。     
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