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青年が背を向け、歩き去るまで、声が止むことはなかった。
――そして、運命は青年をあざ笑うかのように、まわりはじめる。
しばらく旅を続け、次に青年が立ち寄った村で、彼は驚くべき話を耳にした。
集会所にいた村人たちが、なんと噂の大蛇の住処を知っていたのである。
彼の話によれば、この村では昔から有名な話ではあったが、誰も大蛇を恐れ、退治することはできなかったとのこと。青年が自分の身分を明かすと、ぜひともと、退治を頼まれたのだった。
これは好機と思ったのも束の間、住処を聞き、青年が向かった先は――、
「まさか……そんな」
美しい姉妹と、そして龍姫がいた、あの場所だった。
境内に龍姫の姿はない。寺をまわり、茂みの奥にある洞窟を抜け、白い花が咲き乱れる屋敷に戻ってきた青年。
丁度外に出てきた姉、だいねえさまに驚きとともに迎えられた。何故か龍姫の姿は見えず、聞けばお使いでしばらく戻ってはこないとのことだった。
その夜もまた、二人の姉によって宴会が催された。二人とも、青年が戻ってきた理由は聞かず。ただただ嬉しそうに、龍姫が戻ってきたらさぞ驚くだろうと、皆で笑った。
――だが、青年の心は、笑うことなどできなかった。
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