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「……そういえば、旅の先で手に入れた土産がありました」
やがて青年は、思い出したように、荷物の中から一本の酒を取り出した。
――ウワバミと恐れられる大蛇でも、唯一、この酒には弱い。
そう村人に教えられ、持ってきたのは、梅酒。
青年のすすめに、二人の姉妹は何の疑いもなく酒を口にする。青年の胸中には、目の前でほんのり火照り顔の二人が大蛇であってほしくはないと、願う思いがあった。
しかし、思いは裏切られる。
しばらくすると、二人の姉妹はまるで嘘のように体を傾け、そのまま静かな寝息を立てながら寝入ってしまった。青年はじっと、その時を待つ。
やがて、二人の体に変化が訪れた。
着物の裾から見えていた足が消え、するすると蛇のような尻尾があらわれはじめる。白い腕には鱗の模様が浮かび上がり、あれほど美しかった顔は尖り……、まごうことなき、蛇の化身の正体をあらわした。
「嘘だ……。これは何かの、夢であろう?」
噂に聞く大蛇の大きさにはほど遠いが、目の前にある半身が人であることから、おそらく完全に正体をあらわしてはいないのだろう。
「…………」
青年は様々な思いを巡らせ、静かに立ち上がり、脇にあった刀を手に取る。
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