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そしてそのまま、一振りで、姉――ちいねえさまの首を落とした。
これまで何十もの妖怪を切り捨ててきた青年だったが、これほどまでにつらい気持ちに苛まれたのは、はじめてだった。
次に、もう一人――だいねえさまの首を、また一振りで落とした。しかし、
『が、ガアア!』
突然、切り落とした首の目がカッと見開き、真っ赤な口と鋭い牙を青年に向け、飛びかかってきた。すんでのところで刀を盾に避けた青年は、勢いのまま、ダスン、と脳天からその首を刀で畳に縫いつけた。しばらく首はもがいていたが、やがておとなしくなる。そして、かつての美しい声ではなく、地の底から響くようなガラつく声で、青年に語りかけてきた。
『ぎ、貴様が、我等を退治しに来る者だっだが……。最近、表をうろちょろと人間が這いまわっていたが、よもや……』
「…………」
『ふ、ぐ。ごの刀、覚えがあるぞ。我等をこの地へ追いやっだ、あの村の生き残りか……』
「……そうだ。私は、里の民を死に追いやったお前達への復讐のために、生きてきた」
『くく、我が物顔でのさばる人間どもと、辺鄙な地に追いやられ、細々と暮らす我ら。そしてその我等を騙し、まんまと退治を果たしだ貴様。ぐぐ、どぢらが悪か』
「それは――」
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