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しかし、青年が一六を過ぎた元服の年、事件は起こった。
青年が元服の儀に与えられた任務。それは昨今、多くの村や町を襲い、壊滅にたらしめる物の怪――大蛇の住処を突き止めること。
当然、まだ年若い青年に退治は難しいことから、そこまでの条件を出されたわけだが。
それでも、嵐のように村を襲い、たちどころに家々を呑みこみ、まるで霞か雲のように姿を消す大蛇を見つけるのは至難の技であった。
一度、情報整理のために郷の村に帰ってきた青年が見たもの。それは、これまで立ち寄った、大蛇が壊滅させた村と同じ光景だった。
家々は押しつぶされ見る影もなく。
不幸にも、青年の元服の儀のために情報を持ち寄った他の家の武芸者達も巻き込まれ。
民は、家族は、任務で出ていた彼を除いて、すべてが死に絶えていた。
――青年は、目の前に並んだ村の民の墓の前で。強大な大蛇の力を憎み、何もできなかった自分を呪った。
それから、青年の旅が始まった。
目的は唯一つ。大蛇を探し出し、その首を狩ること――。
(あれから、一年……)
青年は蜘蛛の巣が張ってある古びた天井をぼんやりと眺めながら、思い返す。
旅の道中、大蛇の情報を求めながら村々を巡り、時に旅費を稼ぐために戦場に身を置いていた。しかし、
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