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◇◇◇
「ただいま~。ふぅ今日も学校疲れたなぁ。…あれ? こんな所にシャープペンとカッター置いてたっけ? ん…? え、嘘でしょ!? どうしてペットボトルが切られてるの!? ノートパソコンとマウスに水が掛かっちゃってるじゃん! ヤダもう! 電源が入らない。ちょっとお母さ~ん…」
その家の高校生の娘は水が掛かり故障したノートパソコンを持ち、自分の部屋から出て行った。
◇◇◇
「…神は行った様だな」
「あぁ、しかも嬉しい事に帝国も一緒に持って行って下さった」
「ここに…昔みたいに王国を置いて下されば、俺達シャイン族も、ボーペンル族もシゴム族も…オマエ達カタ族だって…また使って頂けるぞ」
「あぁ、そうだな…」
シンとヤイバは帝国がなくなり空き地となったその場所を、長い事眺めていた。
それからしばらくの間、帝国の跡地には王国が置かれる様になり、昔の様に様々な部族が手を取り合う幸せな生活が戻った。
ある日の事、寂しそうな表情をしているシンにヤイバが語りかけて来た。
「どうしたんだ? 最近元気ないな」
「あぁ、オマエか…。何だか最近、王国を取り戻してから変な欲が出て来ちまったんだ…」
「欲?」
「あぁ、俺は今…更なる大陸を目指したいんだ。次、神がお眠りになった頃、俺は床を越えてテレビの台を目指す」
「行ってきまーす」
神が部屋から出て行った。
その瞬間、シンの意識が顔を出し
「よし…今から記念すべき第一歩を踏み出すぞ」
シンは床へと大きくダイブした。そして少しずつ、本当に少しずつ台へと近づいていたのだが
ガチャ
しまった!
「ただいま~。あ~ぁ、今日の学校も疲れたなぁ…アレ? 何でこんな所にシャープペンが落ちているんだろ?」
「…」
神は床に不自然に転がっている自身の持ち物であるシャープペンを拾い上げ、王国の上へと置き
「さて、おやつでも食べに行こ~っと」
部屋から出て行った。
「……畜生」
もう少しで台へと辿り着ける所だったシンは、その夜、涙で枕を濡らしたのであった。
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