その果ての刃

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「ま、そーなんだが。いろいろ世間を知り経験してしまった大人だからこそやってしまう、そんな落ち度というか罪みたいなものもある。大人はずる賢いが、子供違い限られた未来というか人生というものも知ってしまう為か、余裕がなくなる。切羽詰まった大人が取る行動は案外間抜けなものだ」 「先輩?」  男性性器を根元から切断され、失血死してしまっている被害者を見下ろす先輩はまるで、自分の罪を重ねるかのような顔をして見ていた。  私はと言えば、都心近県とは言えないけれど新人刑事で県警の刑事課配属というナイスなスタートと、そんなラッキー配属の新人にはつきものの新人叩きまっただ中で、相方の熟年先輩刑事以外からもあれこれと頼まれ、一旦その場を去った。  県警の刑事といっても新人で女ともなれば所轄刑事とほぼ同じ扱いで、所轄警察署の会議室に設けられた捜査会議の雑用をこなしつつ、事件の概要を頭の中に叩き込む。  高校の同級生はみんな自由になるお金でおしゃれして、好みの男の人を探して繁華街に繰り出す週末も刑事という仕事を選択した時点で私にはない。  おしゃれより動きやす服装、化粧は最低限、どちらかといえば事件がある時はしない。  女っ気がまた遠のいていく私に、恋の話をされても――と思いながら、ふと先輩の言っていた『阿部定事件』が気になり、ネットで調べてみる。  確かに、男女の情事の後殺されたような状態と、男性器が切断されているという状況は似ている。     
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