その果ての刃

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 感情の縺れとも違う、ただの独占欲の果ての行為が殺人だったように私には思えた。  独占欲も感情のひとつだけれど、殺すまでいくだろうか。  縛って閉じ込めてしまえばいいのでは?  同じ罪を犯すにしても、殺すという行為程恐ろしいものはないのでは?  そんな事を思いながら、私はパソコンの電源を落とし、会議室の電気も消してその場を後にした。  仮眠室に入り、靴だけを脱いで固いベッドに身体を横たわらせ目を閉じれば、ものの数秒で眠りに入る。  最初は、どこででも眠れる特技がこんなにも役立つ事に驚いたけれど、それと寝起きがいいのは別物で――眠れると思った直後に起こされ時計を見れば、朝の四時を少し過ぎたくらい。  身体にまだ疲れが残っていたけれど、二時間程、眠っていたみたい。  眠れただけマシと自分を奮い立たせ現場に向かうと、そこには乳房を抉られた女性の遺体が転がっていた。 「凄い顔をしているな、湯江。二日でそんなツラしていたら先が持たないぞ」 「そういう先輩こそ、少しお酒臭いですよ。もう若くはないのですから、晩酌しないで寝た方がいいんじゃないですか?」 「おっ、随分と言うようになったな。ま、そんな元気があればまだ頑張れるか」 「え? まだって?」     
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