その果ての刃

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「権力があれば地元の警官くらいどうとでも言い含められるな。風谷が勝手に思いを抱いて失恋して自棄を起こして命がけの嫌がらせをした。とんだ迷惑だ」 「ええ。当然風谷一家はいられなくなり、夜逃げ当然で姿を消して、キリカも。母を奪い返せたけれど私は大切な友達を失った」  その後、風谷が自殺した庭を見ていたくなく、一帯を更地にして売り、別に持っていた土地に移り住む。  さつきを監視し続ける母は精神的に病んでいき、そんな母を哀れと思える程上手く立ち回れず、お決まりコースで中学時代は少し荒れていたと苦笑交じりで話した。 「発端だった母が亡くなり、後を追うように父が他界し、花巻にある井沼の土地等を全て現金にしてこっちに姉と越してきたのが八年前。花巻の井沼と言えば、この辺りでもまだ有名で、時折忘れた頃、風谷の自殺の話を持ち出されたけれど、本人同士は他界しているしわからないわ――と相手にしないでいると次第にその話題もされなくなる。そんな頃だったわ、風谷が店に来たのは。どこでどう調べたのか、それとも彼自身も真相を知っていたのか、再会した時彼はやっと会えたと言ったの。そして生方キリカの所在を知っているか……と。湯江という苗字に変わっているんだもの、素人にはなかなか見つけられないわよね。だから私は知らないで通した」     
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