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「今回の事件の発端は、風谷の復讐だったというわけか……」
「それは違うと思います。最初の被害者がその風谷ですよ、先輩」
さつきの話が今回の事件に触れようとした直前に、芳本先輩が先読みして推理する。
それを私が否定すると、そうだったな……と小声で悔しそうに呟いた。
「そんなに悔しがることもないわよ、刑事さん。風谷が私の前に姿を現し近づいたのは、復讐だったから。復讐というよりはそれをネタにゆすっていたのだけど」
「ゆすられて、言われるままに従い、それが苦痛になって殺した」
「それは違う。私は殺してはいないと初めにいったわよ、刑事さん。風谷の予定が狂ったのは姉の夏子との出会いだと思う。姉は生前の母に似ていて、成長した風谷は嫌になるくらいあの時の風谷父に似ていた。姉は母のあの行為を見ていないし、どういう経緯で風谷父が自殺をしたのかを知らない。ただ、母の遺伝子を濃く引き継いでしまった姉は、母の思いを引き継ぐかのように風谷に惹かれていったのよ。それは風谷も同じみたい」
夏子の司法解剖の結果、お腹の中に子がいたという報告を受けている。
もしかして、風谷の子?
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