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「お互い家庭を持ってしまっている状態で惹かれるなんて、呪われているわよね。しかも、姉と切れようとしていた風谷の子を妊娠するなんて。自分の家庭より母を取ろうとした風谷父の方が、今にして思えば男らしいと私には思える」
それはどうだろうか……と私は思う。
風谷親子のしていることは世間的に許されるような行為ではない。
どちらを取っても悲しむ者がいるのだから。
それでもどちらかを選ばなければならないのなら、共に家庭を築いていこうと誓った妻の待つ家ではないだろうか。
でも、それは当事者の関係者ではないから言える事で、もし私がさつきの立場なら、母や姉には幸せになって欲しいと思うはず。
それが不倫相手と共にいることだとしても、それを望むなら応援したいと思うかもしれない。
昔は子供だったけれど、今はひとりの女として考える事ができるから。
「風谷にあてたお金は、彼に仕事を優遇する事で折り合いをつけた。私個人で進められる話でもなかったし、姉と引き合わせた事を悔いたわ。一時姿を見せなくなっていたのに、また現れるようになって……あの温泉宿には昔、井沼の家で働いていた家政婦さんが数人いてね、近々建て替えようかという話が出ていると知っていたから、営業をかけてみたらとだけ話たの」
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