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風谷がいくら夏子に惹かれてしまったと言っても、父を殺されたと思っているのだとしたら、復讐を簡単に諦めるとは思えない。
私は一旦席を立ち、捜査会議室として使われている場所に電話を繋いで欲しいと刑事課に連絡を入れた。
確認したことは司法解剖の結果の中の、三体の正確な死亡時刻と死因。
聞かされた結果は私の予想通りだった。
「芳本先輩、この事件、崩せますよ」
「なに?」
席に戻り、腰をおろすとまっすぐさつきを見る。
「ごめんなさいね。私、あなたが守ろうとしてるものを崩させてもらう。刑事だから、罪もない人をいつまでも拘束していたくないから」
私の宣言に、さつきは泣きそうな顔を見せる。
彼女はずっと辛かったんだと思う、この17年間、ひとりで抱えてきて。
もし風谷がさつきや私を探して姿を見せなければ起きなかった事件。
ううん、違う。
十七年前、大人が正直に全てを話していれば、こんな残酷な悲劇は生まれなかった。
「結論からいいますね。犯人はふたりいます。そのうちのひとりが、井沼夏子さんです。そうですよね、井沼さつきさん」
感情を殺し、出来るだけ事務的に淡々とした口調で口火を切った。
「どういうことだ、湯江」
「順番に話します。正確な動機については、これから話す事が正解なら、さつきさんの方から話してください。お願いします」
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