その果ての刃

62/76
前へ
/76ページ
次へ
 相手の男の子を宿していた事は知らなかったが、もし相手の男が夏子と家庭を築きたいと言えば離婚してもいいとさえ思っていた――とも。  黙秘を貫こうと思ったのは、妻を追い込んだ後ろめたさと、最後くらい守ってやりたかったからだと言いながら、机の上に項垂れる猛は、あまりにもいたたまれず見ていられなかったらしい。  風谷と一之瀬まゆの関係について、彼女が殺されるまで気付かなかった事を姉妹ふたりが悔いたといい、更に乳房を切り取るような仕打ちをして、本当に申し訳なかったと涙ながらに語った。  風谷の話を全面的に信じるしかない状況なのだが、首を絞め窒息寸前の女を見るとエクスタシーが最高潮になるのだと彼は言っていたという。  そのプレイをすると女は意識を失い、そう早く目覚める事がない。  その間に会いたいと言われていた夏子に連絡を入れ、別れ話に応じないと17年前の事をばらすという内容の電話をしたが、まゆが思ったより早く意識が戻り聞かれてしまう。  そこでどんな口論があったのかはわからないが、大よそ、私の推理通りではないかとさつきは言う。  全ての罪は十七年前の事を知らず風谷に恋をした私が地獄へ持っていくからという強い姉の思いを説き伏せる事ができず、言われた場所に行くと既に息がなかった。     
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加