その果ての刃

68/76
前へ
/76ページ
次へ
「ん……手紙を貰った。――と言っても日付けはほぼ1年前。慌ただしかったからな、そこらにあるもの分別せずダンボールに詰め込んで異動して、異動してもすぐ事件だ捜査だと駆けずり回り、デスクでゆっくりした記憶がまずない。ダンボールを開けてデスクに揃えるなんてしなかったから、今まで気付くこともなかった」  一年前届いていた手紙をここ最近になって気づいて読んだということだ。  封書ごとさつきママの前に差し出す。 「読んでやってくれ。多分、これは俺からママに伝えて欲しいという伝言だと思う」 「でも……」 「いいんだ。ちゃんと最後に『さつきにも伝えて欲しい』と書いてあるから」  もう一度差し出すと、震える指先で受け取り、中の手紙を読み始めた。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加