その果ての刃

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 芳本先輩へ  警視庁のベテラン刑事が新人の相方になるというのは、とてもやり難かったと思います。  そんな中でも対等に扱って頂けた事は、とても有難く責任ある仕事なのだと言う自覚を強く持つきっかけにもなりました。  あの事件後、十七年前の事件に関わっているかもしれない私は、捜査の一線から外され、芳本先輩の相方も解消、私は部屋の片隅で書類整理等の厄介払い。  それでも時折気にかけ声をかけて下さったお心遣いには大変救われました。  私が刑事を辞職して一年、一年かけて『私』という人物はいったい誰なのだろうかという事に一歩ずつ近づいて来たように思います。  結論を言えば、私は湯江でもなければ、生方でもなく、この世に生れ出た瞬間から姓を持たない子供だという事。  私は塀の中で生まれた子供でした。  生んだ女性と一緒にいた時間は数える程で、私はとある施設に預けられました。  その施設には私のような境遇の者や、犯罪に巻き込まれ親を亡くした子らがいる、そういう子供たちをケアしながら育てていく場所でした。     
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