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もし仮に先輩の見解があっていたとして、叶わぬ恋の果てに殺したとして、それが罪を犯してしまった理由だとしても、私は同情すら犯人に持てない。
だって、どんな理由があっても罪は罪、人を殺していい理由になんてならないから。
でも――
この事件を追いかけていく中、忘れていたあの事を思い出すことになる。
忘れていたかった、できるなら。
みっつの遺体の身元は意外と早く判明した。
所持品はそのまま、金品も全く盗られていないことから物取りの犯行ではないという見解で一致する。
所持品の中にあった携帯電話や社員証、免許証などから被害者の身元の判明と確認が出来てしまったからだった。
最初の遺体、被害者は二十九歳の男性、建築デザイナー。
都心のかなり大手の会社に勤務で、殺害された当日は宿泊していた温泉宿の改築の下見で来ていた。
中居さん含め従業員に話を聞いても、彼はひとりで泊り、彼を訪ねて誰かが来たという形跡はないと言う。
でも、シーズンまっただ中というわけでもなく、どちらかといえば閑散としているこの時期、経費削減で従業員を減らしている為、細かいところまで行き届かない点もあるかもしれないと女将は言う。
それはつまり、従業員含めそういう人物を見ていないけれど、その隙に入り込んでいる可能性は否定できないということになる。
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