その果ての刃

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「ああ。実はな、俺の警視庁異動の話は、事件解決関係なく決まっていたことだった。今度そっちに湯江キリカという女性の新人刑事が配属される。その面倒を俺が受け持つ。一定期間が過ぎた頃、何か理由を付け警視庁に戻してやる――というものだった。新人、しかも女刑事の面倒を見るなんて厄介事を頼まれたと思う者も少なくはない。俺もそのひとりだった。事件が解決して暫くした頃、ご丁寧に警視庁のお偉いさんがわざわざ俺を訪ねて来た。湯江キリカはどんな調子かね? とね。少し異常な執着を感じたんで、最初は上層部の親戚筋かなんかだと思っていた――が、その考えはまったくとんちんかんなものだったと知ったのはこの手紙を読んで暫く経ってからだ」  手紙を読み、湯江が何かとんでもない事に巻き込まれているのではないか、そう思った俺は彼女の後を追ってみた。  手掛かりは生方という姓を持つご夫妻と、彼女が預けられたという施設。  塀の中で生まれたとなれば、その記述も残っている筈だと、そっちも当たってみた。  刑事という特権で、意外にも早くそれらに辿り着くことが出来た。  キリカが預けられた施設というのは、警察絡みの施設でその存在は一部の者にしか知らされていない。  一部の者とは同じ志を持った同士の中の権力を持った者たちだ。  生方ご夫妻はどこにでもいるような至って普通のご夫婦だった。  ただ違っている点があるとするならば、お二人とも事件や事故で親戚を亡くされた経験を持つ身であるということくらいか。  風谷父の一件、確かにキリカの行く末を案じ、施設に相談をしに行ったが、手放すつもりは毛頭なかったのに、一方的に縁組破棄されてしまったらしい。  その後幾度となく交渉してみたものの、最後にはキリカという女の子はもうこの世にはいないと言われ諦めるほかないと思ったと。  その後、施設の者が現れ、キリカに関するものを一切持ち去って行った。     
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