その果ての刃

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「湯江という病院関係者を捜し始めた矢先、上層部の方々に呼び出された。これ以上、キリカに関わる必要はないと。いい調査結果が出ているからと。何れ世の中に公表するつもりだが、一件に関わった俺には特別に教えてくれるという。更生余地のある年代の罪人たち、その者たちの記憶を上書きすることで再犯防止、また社会に馴染みやすくなりまっとうな人生を歩める画期的なシステムだという。上辺だけ聞いていればそうなのかもしれない。だが、その事実を後々知ってしまったらどうなる? そもそも記憶を上書きって? 人格すらも否定していることにならないか? 人の人生をなんだと思っているんだ。聞いている最中、もう怒りしかなかったよ。気づいた時は部屋飛び出して、残っている有休使い切るまで戻る気はないと捨て台詞吐いていたよ」 「それで、今こうして?」 「ああ。ついでにここ来る前、辞職願を叩きつけて来た」 「ひとりでキリカを探すの?」 「それと、キリカと同じ目にあっている者たちの解放かな」 「同じ……施設に預けられた子たちが実験に使われていると?」 「自分たちの目の届く範囲に置いて観察しているはずだ。キリカは警察だったが、関係の病院、施設の人間、留置所……結構あると思っている」 「記憶ってその人のもので、誰にもそれを操作する権利はないのにね。私ね、あと二年経ったら店を誰かに預けようと思っているの。ちょうど、姉が亡くなった歳になるわね、その時は。賃貸収入があるし、日本全国旅してもお金には困らないと思うし。私も探すわ、キリカのこと」 「だが、会いに行くと手紙には」 「今の話を聞いて、キリカがこっちの県警に配属になったのは仕組まれたことだと思うわ。昔の友人と会った時、どんな症状がでるのか……」 「確かに、その思惑はあっただろうな。だとするとだ、風谷がここに来たのも仕組まれていたんじゃないか?」 「――え?」 「普通、妻子ある身で復讐しようなんて思わないだろう。するなら子供が手を離れてからたとかじゃないか?」     
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