その果ての刃

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 また、正面ロビーを通らず中に入り込む事も出来ないこともないというのだから、証言をそのまま鵜呑みする事はできず、聞き込み範囲を広げている最中でもあった。  二体目の被害者は十九歳の女性、地元繁華街でホステスをしている。  ホステスという仕事柄交友関係が多すぎて難航中。  三体目の被害者は川岸に横たわっているのを新聞配達の人が発見、通報。  全裸でしかも全身の毛が剃られている事から、最初はマネキンかと思ったと発見当時の事を証言している。  三十歳、主婦。  夫との仲もよく近所付き合いもいい。  ただ、なかなか子供が出来ない事を悩んでいたという話が出てきていることから、現在夫を重要参考人として取り調べている。  纏められた書類、報告をする刑事の内容との相違も、新たな報告もないまま会議が終わり、午後になるとそれぞれ与えられた持ち場に散って行った。  私はといえば、相方の先輩刑事、芳本さんがちょっと待っててくれと単独行動を希望したので、会議室で待機中。  時折かかってくる聞き込みをしている刑事からの報告と連絡の繋ぎを取りながら、午後の勤務が終わりに近づいた頃、芳本さんが会議室に戻ってきた。 「湯江、出かけるぞ。家宅捜査の許可がおりた」 「家宅捜査?」  被害者の夫が容疑者――いえ、重要参考人の場合、とてもやり難い。     
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