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その小柄な少年は、背中に荒布で包まれた大きな荷物を背負っていた。
「あ、いいねえ」
テランは思わずつぶやいた。いかにも「都は初めてです」という感じの、朴訥とした、素直そうな少年だった。訴えかけるような大きな黒瞳も、きょろきょろと人込みを見回しながら流されていくさまも、おあつらえ向きだった。とても他人をだますようには見えない。
「決まりだな」
テランは都の大通りを見渡す桟敷の席から腰を浮かせた。寄ってきた店員に代金と小銭を握らせ、秀麗な顔に愛想よい笑みを浮かべた。
「ご馳走様」
店員は小銭につられて笑みを返す。テランは手を振って店から出た。店員が深くお辞儀するのが視界の端に映る。ああ、これであの店員の中でテランの印象が極上になっている。結構なことだ。きっと誰かにどんな客だったか訊かれたら、「金髪碧眼の身なりのよい、感じのいい方でした」と答える。
人間、何事も信用が第一。
特に、詐欺師にとっては、印象と信用は大事な飯の種だ。
テランは人ごみにどんどん流されていく少年の肩を造作なく捕まえた。後ろから突然、肩に手を置かれ、少年は吃驚して振り返る。テランはにこやかに言う。
「大丈夫かい? 君、迷子じゃない? 都は初めてなんだろう」
「……あ、ああ、ええ、はい、そうです」
坊主頭の少年はくりくりした目でテランを見上げて、頷いた。他人に対する警戒心を全く感じない。
いいな。ぴったりだ。
「ねえ、君、よければ一緒においで」
テランは、切り出した。
この世には、二種類の人間がいる。
男性と女性である。
ではなく、踊る人間と踊らせる人間だ。テランはごく自然にそう考え、自分は踊らせる側でありたいとつねづね思っている。別に、自分の言葉に誰かが踊ることに歪んだ喜びを感じるとか、そういうことではない。単純に、向き不向きの問題だ。テランは、他人の言葉に心から腹落ちしたことがない。感動したこともない。感心したこともない。だから、他人の言葉、他人の意見に意味を見いだせない。他人の存在に意味を見いだせない。意味があるのは自分だけだ。
そう思うから、詐欺師をやっている。誰かが心からくれる金銭で生きている。テランは相手が欲しがる言葉を与える・相手は金銭をくれる、それがごくまっとうな取引のようにテランは感じていた。もう感覚が通常人とは違うのだ。違っていることはわかっていたが、
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