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 千人の私がスマホを取り出して一斉に検索をはじめた。答えなんてあるわけない。けれど、すこしでもヒントがありそうなところへ千人の私が全力ダッシュ。あらゆる交通網を使い、日本中、いや世界中へ。蜘蛛の子を散らすように広がっていく。  ふと気が付いた。あれっ、私、自分でなにも決められないんじゃなかったっけ。ひとりじゃなにも動き出せないんじゃなかったっけ。できてるじゃん!  「あたしはよく知ってる」とまるで心を読んだかのようなテッちゃん。さっきまであんなに泣いていたのに今ではケロリとしている。 「たしかにあんた、自分のことなのに自分で決められない。だれかと一緒でなきゃ動き出せない、どうしようもないやつよね。でも」 「でも?」 「長い付き合いだから分かる。あんたは自分のためでなく、だれかの為だったら決断も行動もできるってこと」  テッちゃんはウインクして言った。「いい子だよ、あんたってやつは」  私は笑った。やられた! ぜんぶテッちゃんの作戦だったんだ! 「さすがテッちゃん!」 「まあねえ」  じゃあ、増えた私もなんとかできるのね、さすがくのいちの末裔!    そう言うとテッちゃんは急に黙ってしまった。    あれ?
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