0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
千人の私がスマホを取り出して一斉に検索をはじめた。答えなんてあるわけない。けれど、すこしでもヒントがありそうなところへ千人の私が全力ダッシュ。あらゆる交通網を使い、日本中、いや世界中へ。蜘蛛の子を散らすように広がっていく。
ふと気が付いた。あれっ、私、自分でなにも決められないんじゃなかったっけ。ひとりじゃなにも動き出せないんじゃなかったっけ。できてるじゃん!
「あたしはよく知ってる」とまるで心を読んだかのようなテッちゃん。さっきまであんなに泣いていたのに今ではケロリとしている。
「たしかにあんた、自分のことなのに自分で決められない。だれかと一緒でなきゃ動き出せない、どうしようもないやつよね。でも」
「でも?」
「長い付き合いだから分かる。あんたは自分のためでなく、だれかの為だったら決断も行動もできるってこと」
テッちゃんはウインクして言った。「いい子だよ、あんたってやつは」
私は笑った。やられた! ぜんぶテッちゃんの作戦だったんだ!
「さすがテッちゃん!」
「まあねえ」
じゃあ、増えた私もなんとかできるのね、さすがくのいちの末裔!
そう言うとテッちゃんは急に黙ってしまった。
あれ?
最初のコメントを投稿しよう!