私の大切な100の人

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 ……私は今日、お父さんと船橋(ふなばし)由紀(ゆき)さんと、3人で食卓を囲んでみようと思う。いつも由紀さんに食事を作ってもらってるくせに、それを自分の部屋に持って行って、1人で食べていた失礼な私。  だけど勇気を持って私は、今日を境に2人と向き合おうと決める。もっとお父さんと彼女について、私は知らなければならない。関係性を割り切るだとか、そういった冷たくて、固くて、よそよそしい態度をとるつもりはさらさらない。ただ私は、2人に歩み寄りたいのだ。私も変わってみたいと、今日思わされたのだ。  新一が言っていた。 「100人の大切な人がいるとして、そいつらもお前のこと大事だと思ってんのかな」  大事も何も、実際数えてみれば私に、100人も相思相愛の人間なんていなかった。口から出任せだ。苦し紛れにペロの名前も書いたし、数合わせの彼氏も友達も、今日いっぺんに失ってしまった。関係性の強度なんて、私の場合はトランプタワー並みに脆かった。そのことに対し、気づかないフリをずっと続けていたのだ。  ……でももう、作り物の愛なんて必要ない。  あの屋上でのやりとりの後、教室に戻ってから新一は、私に100人ノートを返してくれた。そういえば朝から彼に預けっぱなしだったのだ。  実は恥ずかしくて新一の名前をノートに書いていなかったのだが、私は授業中こっそり彼の名を、ペロの下に追加しておく。何だかムズムズした気持ちになるし、わざわざ書かなくても良かったかも、なんて思う。  そして新一の名前をぼんやり眺めていると、ふと思い出す。私は彼との賭けに負けたので「お前は俺と付き合いたくなーる」についてどうなるのか考えてみるけど……新一が魔法使いじゃなくなったからなのか、効き目はまだ薄いみたいだ。それとも私がまだ子どものままで、素直になれてないだけ?  ーーでも間違いなく、新一は私にとって大切な人だ。100人なんて、別に要らない。こういうのは、数の大きさじゃないのだ。  それが今は、痛いほど判るーー。
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