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「葉月、俺がお前に魔法かけてやるよ。お前が大事に思ってる100人と葉月自身が、本当に相思相愛なら、俺はお前の保護者役をやめる」
「ストーカーの間違いでしょ。てか、どこが魔法なわけ? ダメだったらどうなんの?」
「……お前は俺と付き合いたくなーる」
それが魔法? バカだ、こいつ。10年以上同じ時を一緒に過ごしてきて、今さら男女の関係になるだなんて、絶対にあり得ない。
「てか私、付き合ってる人いるし」
「3年4組の古島先輩だろ。あの人、他にも女いるぜ」
「えーーーっ!」
知らなかった。マジか。ショック……と思ったけど、不思議とそうでもない。怒りはもちろんあるけど、どちらかというとこれは、あんな男に"出し抜かれた"という悔しさのような気がした。
新一は携帯の画面を見せてくれる。古島先輩と他校の女子生徒が、クレープを食べながら手を繋いで歩いている写真。この男にとって携帯電話は、他人の弱みを握るための便利グッズといっても過言ではなかった。
「それじゃあ、葉月に宿題出しとくわ。お前がさっき言ってた大切な100人、リストアップしといてな」
「何でそんなこと、」
「だってそれがないと、賭けが成立しないっしょ。じゃ、よろしくー」
いつの間にか私たちは、家の前に着いていた。そそくさと小階段を上がって、自宅に入って行く新一。
私は夜の街に後ろ髪を引かれながら、仕方なく自分の家の玄関扉を開く。おかえりなさいという女の人の声と、こんな時間までどこ行ってたんだ、というお父さんの怒ったような声がリビングから聞こえるけど、私はそれを無視して2階の自分の部屋に行く。電気も点けずベッドに寝転ぶと、私は昔のことで頭がいっぱいになる。
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