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神に与えられたこの身は何の味方にもなってはくれない。
「俺が神に逆らっているからなのか」
――何の為に神が我々を別の世界に産んだのか。誰かの言葉が頭に木霊する。
アグニは思いつく限りの罵倒を叫んだ。泣き叫ぶような声が轟く。
何が神様だ!何が守り人だ!
会いたい人にも会わせてくれないくせに、何が!
「ノルンのところへ行きたいっ…!」
涙が岩壁にぽたりと染み込む。その時、何かが背に触れた。
それは優しく、しかし力強くアグニの背を押す。
澄んだ空気の香りがする。どこかで水の音も。
手足が羽のように軽くなり、驚いて振り返るよりも先にアグニの体は岩壁の中へと吸い込まれていった。
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