光冠を投げ捨てよ

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「別に凄い力じゃない。翌日の天候とか、次に生まれるのは男か女かとかその程度だ。必ずしも全部当たるわけでもないし」 「今も何か見れるのか?」 「決まった事柄しか見てはいけない」 期待はずれだろとノルンは言ったが、それでも十分に凄い力だと思った。 アグニは耳打ちするようにこそりとノルンに囁いた。 「太陽の国では、月の民の目を見ると心を読み取られて魂を取られるって有名なんだ」 ノルンは腹を抱えて大笑いをした。 「ばか言うなよ、そんなこと出来っこない。それならアグニはとっくに魂を取られてるじゃないか」 「…それもそうだ」 あっさり納得したアグニは再びごろんと仰向けになり、なんだ嘘っぱちかと安堵の息をついた。 「怖かったのか?」 「怖くなんかないぞ。…あ、会うまではちょっとだけ怖かったけど」 「俺もだよ。守り人がアグニでよかった」 噂に尾ひれがついて、さも恐ろしい怪奇のように語り継がれている異族の民達。 笑うノルンを見て、彼は自分と同じただの子供なのだとわかり嬉しくなった。
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