光冠を投げ捨てよ

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呟いた途端、はっと意識が現実に戻ってくる。脳裏に浮かぶ青年の姿がアグニの心を持ち直させた。 「ノルン…に、会いたい」 アグニは力を振り絞って立ち上がった。 それはまたあの不思議な声でひと鳴きすると尾を揺らした。まるで、ついて来いと誘うような仕種だった。 「…どこに行けば、会える?」 おずおず問いかければ、それは背を向けて砂漠を走り出した。 「ま、待って…!待ってくれ!」 アグニはその後ろ姿を必死に追いかけた。 アグニは砂埃に汚れた顔を腕で拭きながら、驚きに口を大きく開けた。 数多に立ち並ぶ細長い円錐の塔。はりねずみの背のようだと思った。 足元にはあの生き物がちょんと座り尾を揺らしている。どうやら案内をしてくれるのはここまでのようだ。 それでも、それは座りながらある一つの塔だけをじっと見つめていた。 「あそこに、いるのか」 アグニは一際高い塔へと顔を向け、ぎゅっと口を閉じた。ここからだとまだまだ距離はある。人に見つからないように塔を登っていこう。 果てしない砂漠を走り抜け、疲れ切った体では容易に出来ることではない。いくら頑丈な太陽の民でも、あの高さから落ちれば命を落とすだろう。 だがアグニにそれ以外の考えは思いつかなかった。     
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