光冠を投げ捨てよ

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名を呼びかけられ、心臓が縮まる。 「って、言うんだよな」 「…うん」 「…それ、触ってみてもいい?」 そう言ってノルンがおずおずと指さしたのは、アグニの額。 「角?」 「う、うん。初めて見たから…その、きらきらした角」 アグニは呆気にとられたまま自分の角を手で触った。角は太陽の民の象徴だ。月の者に触れさせてもいいのだろうか。 ノルンをじっと見つめたが彼は照れくさそうに赤らんだ顔でそわそわするだけで、案内の道中長老が垣間見せたような敵意や嫌悪などはまるでなかった。 暫く考えたアグニだが、やがて頷いてノルンにずいっと頭を近づけた。     
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