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光冠を投げ捨てよ
遥か遠い、誰からも忘れ去られた昔の話。
それはこの世が太陽の地と、月の地という並び合う二つの世界から成り立っていたころ。
月の地は常闇を月が優しく照らし、その地に住む者達は淡い色の髪に白い肌、金色に光る瞳を持っている。
太陽の地は常に煌々と日差しが照らされ、その地に住む者たちは皆が濃い髪に浅黒い肌、橙色に煌めく角を持っている。
双方とても美しい種族だった。
だがこの二つの地の種族はとても仲が悪く、決してお互いを認めることをしなかった。
太陽の民達は青白い陰気な種族だと月の民を嘲け、月の民達は角のある野蛮な種族だと太陽の民を侮蔑していた。
太陽と月の地の間には高く険しい岩山が、果てがわからぬほど遠く立ち並び、まるで一つの大きな壁のようになって二つの世界を隔てていた。
そんな二つの種族が交わるのは一年に一度きり。
二つの地から一人ずつ、守り人と呼ばれる種族を代表する優れた者が選ばれる。
最も瞳の色が美しい者が月の守り人。最も角の大きな者が太陽の守り人。
二つの国を隔てる岩山。そこに静かに潜む神殿で、守り人の二人が神事の儀式を立てる。その時のみだった。
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