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闇オークション
死にたい。
「さぁ、久々のΩです!」
司会の声に、スポットがあたしに当たる。
眩しい……。
ざわつく会場は薄暗い。そして、明るい場所にいるのはあたしだけ。こんな暗いんだから仮面なんてしなくても顔なんて見えないのに、みんな仮面を被ってあたしを見てる。
商品を値踏みするような、嫌な視線はガラスの向こうから。あたしはガラスケースの中にいる。ちゃんと仕切ってないと、フェロモンでバレてしまうかららしい。
こんな見すぼらしいあたしは、オメガという価値があるだけ。けれど、番ではないとわかったら、それこそなんの価値もないのだ。
「絶滅危惧種と言われ殆どが政府に管理されてますが、これは無登録! 滅多に出る代物ではありません! さあ、一千万からっ!」
本当なら、オメガってだけでもっと高い値段がつくらしい。でも、あたしは最低価格。
まぁ、それは理解できた。ガリガリの体は男か女かも見分けるのは難しいだろう。胸に膨らみなんてほとんど無い。
「二千万! まだありませんか? 珍しい女のオメガですよ!」
髪は、以前の飼い主に焼かれて、少年のように短く切って整えられた。
「二千五百万! 他、ありませんか?」
体にはまだ生傷が残ってる。それはなんとか見えないようにファンデーションでかくして服を着せられてるけど、ばれたら返品されちゃうんじゃないかな?
眩しさに、自然と涙が溢れた。
「5千万、出ました!」
あたしの値段は、5千万。安いのか高いのか、そんなことはもうどうでも良かった。
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