本能と理性

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「いい人、だね、クロ」  腕の中のクロにそう問いかけるけど、クロは知らんぷりだ。  仕方ない、クロは竜生さんになついてないから。  ううん、クロはわかってるんだ。竜生さんが怖い人だって。だから竜生さんがいるときはいつも彼を目で追ってる。椅子から立ち上がればびくっと振り返り、彼の一挙一動を逃さない。  私と一緒……。 「クロは、嫌い?」  そう聞いたところで、答えるはずもないけど。 「私はね……」  彼がアルファじゃなかったら、私がオメガじゃなかったら、もっと違う出会い方が出来たかな?  なんて、そうじゃなかったら出会えなかった。  でも、この出会いを『運命』なんて言ってしまえない。  だって、私は竜生さんの『番』じゃ無いんだから。
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