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ぽたり、と点滴がゆっくりと落ちる。
「一応これで死ぬことはないよ」
「……何か薬でも?」
青い痣のある腕にそういえば、悠人は首を振った。
「そんな反応はない。これは点滴の後だ。殆ど口から入れずに点滴のみで生かされてたんだろう。二時間ほどしたらこれも終わるから針は自分で抜いてね?」
点滴で? 一体どういう状況で彼女はあそこに居たんだ?
「で、オメガが箱に入れられて捨てられてた、ってわけじゃないでしょ?」
ここまでさせておいて何も話さない、という選択肢はない。俺は、彼女がここに来た経緯を悠人に話した。
「──バカなの? 竜生、番のオメガなんてそう簡単に見つかるわけ無いでしょ!?」
俺もそう思うよ。
「ってか、違ってたときのことを考えてなかったの?」
転売すればいいかな? と思ってた、なんて言ったらぶん殴られそうだな。仮に逆の立場なら、俺は違いなく殴ってるしな。
「……まぁ、この状態で俺を呼んだことは褒めてあげよう。で、どうするの?」
「……」
どうするべきなのか。
普通に考えれば、警察に届け彼女を政府に預ける。その際、根掘り葉掘り聞かれるだろうが、希少なオメガを渡すのだ、多少のことは目を瞑って貰えるだろう。
それに、彼女としても最低限の生活は保証されるわけで、俺が勉強代に五千万払っただけ、という間抜けなエンディングだが悪くはないはずだ。
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