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小さな彼女の呻きに、これまでの彼女の境遇を垣間見た気がした。
おそらく、俺が想像してる以上にひどい扱いだったんだろう。
「大丈夫。ここにはもうそんな人は居ないよ」
そう言ったのは悠人だ。俺の肩をぽんと叩き、彼女に近づいていく。
確かにここはこいつに任せたほうがよさそうだ。
「こっ、来ないでっ」
「肩を治すだけ。ほら、その肩じゃ歩くのも難しいんじゃない?」
「い、要らないっ」
「僕ね、医者をしてるんだけど、こんな可愛い女の子に飛び降り自殺は勧めないなぁ。この高さだと原形を留めないよ? せっかくこんな可愛いのに」
悠人の伸ばす手に、ビクッと彼女の体が震える。
フェロモン全開の悠人に逆らえる女は居ないだろう。
まして、彼女はアルファの影響を受けやすいオメガだ。
「……いや」
なのに、彼女はなお悠人を拒む言葉を口にした。
「とりあえず、治させて?」
けれど、その言葉に彼女は涙を流した。
やはり、アルファのフェロモンには逆らえないのか。そう思ったのに。
「……して」
「え?」
「あたしを、殺して……」
彼女は涙を流しながら、そう言った。
死にたがりのオメガ
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