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彼女のまつげが僅かに動く。幼い顔立ちだが、まつ毛は長い。改めて見れば、アルファでも無いのにきれいな顔立ちをしている方だろう。
ゆっくりと開く瞳は、日本人なのに少しばかりオレンジがかっていた。
「目が覚めたか?」
「──っ!?」
俺がいたことに驚いたのか、体を起こそうとして痛みに顔を歪めた。
「起きるならゆっくりにしろ。まだ肩が痛むはずだ」
痛みに顔を歪めながらも、彼女は視線を動かし辺りを伺ってる。
「昨日のホテルだ。動けるなら朝飯でも食うか?」
「……」
その問いに返事はなく、じっと俺を見上げてる。本当に野良猫だな。
「そう言えばまだ名前を──」
そこまで言って、俺も自分の名前を言ってないことに気がついた。
「俺は神坂竜生。お前、名前は?」
「……」
いつまでダンマリをするつもりだ?
「ずっと『お前』と呼ばれたいのか?」
「……」
「おいっ、名前は!」
「──っ」
少し強く言えば、怯えるように身を縮める。くそっ、俺が虐待してるみたいじゃないか!
「名前だ、名前! あるだろう? 親に貰った名前が!」
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