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「……あの」
聞こてくる声に立ち上がった。開いたドアの隙間から猫のような目と、彼女の手にさっき置いておいた紙袋が見えた。
「あぁ、出たのか。その袋の中に服がある。それを着たら朝食の続きだ」
そう言うとまたパタンとドアを閉めた。少しして、ペタッと音を鳴らしてバスルームからミイが出てきた。しまった、靴がない。ホテルも気を利かせて靴まで持ってこい。
「とりあえず、そこのスリッパを履いとけ。靴はまた後で買ってやる」
俺の言葉に従ってスリッパを履いたのだろう。今度はパタパタと音を変えて、こちらに歩いてきた。
「粥を用意させた。これならーー」
だから振り向いたのに、彼女は俺の視線の先にはおらず、入り口の鏡で自分を見ていた。
ホテルが持ってきた服は、とてもセンスがいい、とはいい難い。チュールのスカートにフリル満載なブラウス。これを着てどこに行けと言うのだろうか?
「言っとくが俺の趣味じゃないぞ? ホテルに任せたらーー」
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