ペットを飼う

11/26

218人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
「……あの」  聞こてくる声に立ち上がった。開いたドアの隙間から猫のような目と、彼女の手にさっき置いておいた紙袋が見えた。 「あぁ、出たのか。その袋の中に服がある。それを着たら朝食の続きだ」  そう言うとまたパタンとドアを閉めた。少しして、ペタッと音を鳴らしてバスルームからミイが出てきた。しまった、靴がない。ホテルも気を利かせて靴まで持ってこい。 「とりあえず、そこのスリッパを履いとけ。靴はまた後で買ってやる」  俺の言葉に従ってスリッパを履いたのだろう。今度はパタパタと音を変えて、こちらに歩いてきた。 「粥を用意させた。これならーー」  だから振り向いたのに、彼女は俺の視線の先にはおらず、入り口の鏡で自分を見ていた。  ホテルが持ってきた服は、とてもセンスがいい、とはいい難い。チュールのスカートにフリル満載なブラウス。これを着てどこに行けと言うのだろうか? 「言っとくが俺の趣味じゃないぞ? ホテルに任せたらーー」
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

218人が本棚に入れています
本棚に追加