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そんな服なのに、鏡の中の彼女は少しだけ華やぐように微笑んでた。昨日、窓枠を乗り越えたときのような儚さを含んだ笑みではなくて、この年齢に相応しい笑顔だ。
「気に入ったか?」
「ーーっ」
俺がすぐ後ろに居ることに気がついて、飛びはねて振り向く。そうなればもうさっきの笑顔はなくて、少しだけ残念な気がするのは、俺にも多少の父性本能とでも言うべきものがあるからだろうか?
「今はそれで我慢しろ。ほら、粥が冷める。食べないと痛み止めが飲めんぞ?」
俺の言葉に促され、彼女はまた同じ席についた。不思議に思ったのか、床を眺めてる。
「お前がシャワー浴びてる間に清掃してもらった。もう落ちてるものは食べるな。あんなことは二度としなくていい」
「……」
「食え」
「……い、ただきます」
やっと、彼女とまともな会話をすることが出来た。
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