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「あー、もうこんな時間か。俺はちょっと仕事に行ってくる。夕方には帰る」
「……」
「病院に行くんだよ。昨日の覚えてるか? 悠人んとこ。ちゃんと連れてってやるからここで待ってろ」
「……」
そう言うと、彼は自分の部屋のクローゼットからジャケットを取り出し、今度はバスルームに移動するから付いていった。
すると顔を洗って、ドライヤーを取り出してセットを始めた。
「ミイ、ここはマンションの最上階だ。ここから飛び降りれば確実に死ねる」
「……」
「でも考えろ。俺はお前を鎖で繋がないし、GPSも付けない。逃げようと思ったら逃げれる。死ぬくらいなら逃げろ」
「……」
「でも、今日は待ってろ。病院、行く約束しちまったからな。それじゃ行ってくる」
そして彼は部屋から出ていった。
いなくなった瞬間、音が無くなった。歩けばあたしの足音だけが聞こえる。
「あたしの、部屋」
ベッドしか無いのは今までと同じだけど、今までとは全然違う。清潔なシーツに明るいお部屋。
触れると柔らかくて、いい匂いがした。
「神坂、竜生、さん……」
いい人、なのかな? でもそんないい人がなんであのオークションであたしを買ったりするんだろう?
『死ぬくらいなら逃げろ』
逃げても、追いかけないの? 追いかけて捕まえて、ひどいことしないの?
あたしは、どうすれば良いんだろう?
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