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「社長、お呼びですか?」
社長室に入るなり、見えた人物にうんざりしそうになった。
「こんにちは、竜生さん」
俺に挨拶したのは、社長の長女、菱峰美麗。諸悪の根源だ。そもそもこいつが居なければ、俺は闇オークションなんてものに手を出さなかったんだ。
「こんにちは、美麗さん。で、社長、なにか?」
彼女を無視して話を進めようにしたのに。
「いや、美麗が君とランチでもというのでね。どうかね、今から一緒に」
「あのね? 銀座に素敵なお店を見つけたの。オープンテラスで気軽にフレンチを楽しめて」
「お二人でどうぞ。残念ですが、私はまだ仕事がありますので」
「はっはっはっ、相変わらず仕事の鬼だなぁ。そんなんで私生活は大丈夫か? そろそろ君も身を固めてはどうかね?」
……セクハラで訴えるぞ? このハゲ親父! とは言えるはずもなく、「そうですね」と曖昧に返す俺はなんて大人だろうか。
「それで、お話は以上で? 申し訳ありませんが会議を控えていますので」
話をテキトーにぶった切って、俺は一礼すると社長室を出た。
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