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「パパぁ! どういうこと!?」
ドア越しに聞こえる美麗のヒステリックな声には、うんざりさせられる。
「まあ、慌てることはないさ。彼はオメガシステムにも登録してないんだし、いずれベータの女と結婚する。なら、この会社もすんなり手にはいるお前を選ぶに決まってるだろう?」
なわけ無い。ふざけるな。
「もう! その前に番に会ったらどうするの?」
「ハハッ、そんなのは都市伝説だ。わしは生まれてこのかた番なんぞ見たことない」
それはお前がベータだからだよ。
心でそう吐き捨てて、俺は社長室を離れた。
一族会社なんてものは、百害あって一理なし。無能でもそいつを上に立たせないといけないし、有能なやつが会社に入っても、一族に嫌われれば意見は通らない。
それでも彼らを完全に排除できないのは、祖先の功績と蓄えた財力があるからだ。
全く、それを俺に預ければ運用して生活には困らんだけの環境を与えるから、さっさと引退すればいいものを。
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