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「何かあったか?」
マンションに着き、いつものようにコンシェルジュの雪村に確認する。
「お帰りなさいませ。何もございません」
「そう……、ちょっと待て、何も?」
そう聞く俺に雪村は「はい、何も」と繰り返す。
「あの子から連絡は?」
「ございませんでした」
もう夜だ。あいつ、朝に粥食っただけだよな? うちに食い物なんてあったか? まぁ、ツマミのチーズくらいはあるな。って、飯の代わりにはならんな。それに飲み物にしたって、ビールくらいしか無いはずなんだが。
「……出かけたのか?」
「いいえ、ご在宅かと存じます」
「……分かった」
俺は少し足早にエレベーターに向かった。こんな時に限ってなかなか来ないからイライラが募る。
そして、エレベーターに乗り込み上がっていく数字と共に俺の心拍数も上がっていく。
頼むから、馬鹿なことをやってくれるなよ?
開くドアをこじ開けるようにして、エレベーターを降り、すぐさま部屋のドアノブに手をかける。
ガチャリと開くドア、すると暗かった部屋に明かりが灯った。
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