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「アルファには必ず番となるオメガがいる。その相手となら、至福の快楽を得られる」
そんな都市伝説を真に受けたわけじゃない。
けれど世界にはオメガがいて、アルファがオメガのフェロモンにベータ以上に反応することは科学的にも実証されている。
オメガなら、『番』ならこの空虚感を埋めてくれるのだろうか?
そんな些末な思いの為に、俺はオメガを購入した。
統計的にはアルファの数だけオメガが存在するといわれているが、オメガはその性別を隠して生きていることが多いらしい。
なぜなら彼らの持つ「発情期」が生活を妨げるのという。その期間に入ると性交することしか考えられなくなるらしい。それを抑制する薬も開発され、彼らはそれを服用しながら生活しているのだと聞いた。
いっそ、番であるアルファを探したほうが? と思うのだが、こちらがこんなに探しても「番」のオメガなんて早々見つかるもんじゃない。その逆はさらに困難を極めるだろう。
それならオメガであることを隠して生活するというのも、納得できるというものだ。
そもそも「番」、それ自体、ただの都市伝説なのかもしれない。
政府からあてがわれるオメガもいるが、数は希少で順番待ち。それに並ぶのも億劫で、俺は申請しなかった。
けれどオメガが生むアルファ率は高い(相手がアルファに限り)。そのために、申請者の数が減ることはないらしい。
まるで交配される犬コロみたいだ。
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