僕、どうやら魔法が使えるみたいです

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どこまでも無茶振りをしてくる魔術師さん、魔法、魔術……何がある? オリジナルって言われたって、そんなのよく分からない。そう言えばシロさんに最初に言われたけど、魔導師が仲間に居れば転移魔法も使えるとか言ってたよね? それ僕にも出来るのかな? それってどうやるんだろ? 次元を歪める? 繋げる? イメージすればいいのかな……? 「ええっと『どこでもドア~』なんちゃって……」 どこかの部屋に繋がるようなイメージを頭に浮かべ、ちょこちょこっと扉に駆け寄って、部屋の扉を開けてみた。そこには僕達が通ってきた廊下が続いているはずなのに、何故か扉の向こうに僕の部屋が現れた。そう、この世界じゃない、僕の元々住んでいた、僕の部屋だ。 「あれ……? ホントに出来た……」 やってみたはいいけれど、本当に出来ると思わなかった僕は、自分のやった事に驚いてしまう。 あれ? ちょっと待って、これ、もしかして僕、元の世界に帰れるんじゃね? 瞬間、襲った振動に僕はびくりと身を竦ませる。 「え?! なに!? 地震!!?」 「いかん! 世界に歪みが出た、これは……」 何故か扉の向こうの世界が歪む、繋がったと思った僕の部屋がブラックホールに飲み込まれるように消えてなくなり、扉の向こうに闇が広がる。 「え、え……なに、何コレ!?」 「いかん! 早くその扉を閉めろっ!! 魔物がくるぞ!!!」 「えっ、魔物……?!」 何も無い空間、そこにはよく分からない歪みが生じて、何か黒くうねったモノが伸びてくる。何コレ、気持ち悪いっっ! 「早く閉めろと言っておる、この馬鹿者がっっ!!」 言うが早いか、一陣の暴風が僕の脇を掠め、それと同時に僕の身体を抱きこむ腕の中に僕はすっぽり包まれていた。扉が物凄い勢いでばたん!と大きな音を立てて閉まる。僕は何が起こったのか分からなくて、シロさんの腕の中でがたがたと震えていた。 「い、今の、なに? あれ……魔物?」 「そうだな、何かの魔物の触手のようだったな……」 シロさんが思いのほか落ち着いている。そういえば、シロさんとシリウスさんは魔物退治が仕事だっけ? 魔物には慣れているのかな…… 「小僧、お主、今、一体何をした……?」 「何って……僕の部屋の扉と、この部屋の扉を繋げてみたんですけど……」 「高度な空間操作の魔術だの、だが、それだけでこんな事は起こりはせん。今、この世界に歪みが生じた、その扉は世界の果てと繋がった、こんな事は在り得ない……」 「今の部屋に私は見覚えがない、もしかしてあの部屋はスバル、お前自身の部屋だったのか?」 「えっと、うん、そうだよ。僕の世界の僕の部屋……」 「お主の世界……?」 僕の言葉に反応して、魔術師さんが目を細める。それは少し怒っているようでもあり、僕は怖くなって、シロさんの腕に縋り付いた。 「そういえば、お主は別世界から来たようだと、先程シロウが言っていたか……そして、そんな別世界を、空間を捻じ曲げ、この世界に繋げた……と、そういう事か」 「えっと、たぶん、そうなんだと思います」 「これは理(ことわり)に反する事象か。在ってはならない者が在ってはならない場所に存在している、お主はこの世界に在ってはならない存在、そういう事かもしれんの」 理に反する……? ここに在ってはならない? 確かに僕はこの世界の人間じゃないし、存在してはいけない人間なのかもしれないけど、でもだからと言って僕にどうしろって言うのさ!? 目が覚めたらこの世界に居たんだよ!? 僕だって帰れるなら帰りたいよ! 「私が幼い頃、まだこの世界に存在する魔物はそれほど危険なモノではなかった」 魔術師さんが、やはり瞳を細めて語り出す。 「それがある時、世界に歪みが生じて世界の果てから凶悪な魔物が現れるようになった。この世界に住まう魔物はあっという間に取り込まれ、凶暴性は増し、次々に街は襲われた。それは突然の出来事で、未だにその原因は究明される事もなく現在に至るのだが、お主の存在はもしかすると、そんな魔物出現の原因を探る事のできる『鍵』であるのかもしれんの……」 魔物出現の『鍵』僕には全く分からない事、先程垣間見た魔物の触手、僕は今まであんな物を見た事がない。 僕には無関係だ、こんな世界を僕は知らないし、そんな事を言われても僕には何も出来ないよ。 「スバル、大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」 僕を抱き上げたシロさんが僕の顔を覗き込む。 「シロさん、僕……」 ふいに目の前の景色がぐにゃりと歪んだ。あれ……? なんだろう、力が抜ける。 「おい、スバル! しっかりしろ、スバル!」 もふっとしたシロさんの手が僕の頬を撫でた。 あぁ……目が回る。僕、もしかして死ぬのかな……? どうせ死ぬならシロさんの肉球、ぷにぷにさせて貰っとけば良かった……
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