Green Eyed Monster

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   大山組と熊谷組。昔から荷役の要として港を仕切り、町を守って来てくれた二つの組。  その昔、江戸の火消しは普段は鳶職などで生計を立てたと言うが、この町では荷役がそうだった。『意地と度胸、人情なら江戸っ子にだって負けていませんよ』と桐吾が自慢げに教えてくれたものだ。事実、ひとたび火事や地震が起きれば組の者達が最も働いてくれた。そしてその時ばかりは組の垣根なく助け合うのが決まりで、運悪く焼け出された者達も、生活の再建までをどちらかの世話になる事も多かった。 「親分さんはお若い頃から情に厚いお方だったんですね」 「桐吾も我が子のように可愛がられたと言っていた。長生きして欲しいものだ」 「熊谷組の親分さんは、確かまだお若いんですね」 「真琴(まこと)は、そうだね。貴方よりまだ少し下だ。だが先代のお内儀がまだまだ腕を振るっている。私とあまり変わらない年だが男勝りの気の強さで、息子を支え組を支え⋯⋯なかなか見事な女性だよ」  父と誉が作った秩序。それは今なお受け継がれている。だが時代と共に、荷役だけではなくそれぞれが事業を展開し、嘉之丞が社長を務める三原建設でも重要な役割を担ってくれている。この町の基礎を作った立役者は彼らだ。
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