Green Eyed Monster

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   私が朔夜から温もりを貰ったように、朔夜も私から温もりを受け取っていたのだ。小鳥の雛のようにこの胸に寄り添ってくれても、何もしてやれない虚しさに遣り切れなさもあったものだが⋯⋯ 「旦那様が別れ際に渡す大金入りの “御守り” を、実際に親父に預けた色子はほんの数人だったそうです。大抵の色子はその金を遊びや博打、間夫に突っ込んじまうか、良くて借金の清算に充てるか⋯⋯だがそう言うのは、年季明けも結局行く宛がなく、また廓に引き返すのがオチとでも言うんですかねぇ⋯⋯」  弥助は自分を信じて守り袋を預ける色子は『賢い』と感じ、年季明けには迎えに行ってやったのだと言う。外の飯を食べさせ、衣服を揃え、見世を出したい者には修行出来る奉公先を斡旋し、故郷へ帰りたいと望む者には旅の支度を整え便利の良い駅や船着場まで送り届け⋯⋯弥助は弥助なりのやり方で、生き直して未来を掴もうとする若者を支援していたのだ。  弥助⋯⋯お前はなんと立派な人徳者だろう。手間賃を老後の楽しみに宛てている悪党などと揶揄してすまなかった⋯⋯! 「いや、手間賃はきっちり抜いてたようですよ。それに若い綺麗どころと無料(ただ)で相席したり茶を飲みながら語らったり、正に老後の楽しみとホクホクしてました」 「⋯⋯そ、そうか⋯⋯」  
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