Green Eyed Monster

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  「気づいておられましたか?」 「何をだね?」 「イサクはヤコブの父親です」 「ああ、そう言えばそうだね」 「何かの啓示でしょうか⋯⋯私は、今一度初心に立ち返らないといけない気がしています」  とても哲学的だね、と言い掛けて、私はそれを飲み込んだ。唇を結んだ凛とした横顔が、それ以上は何も言いたくないと語っているような気がしたからだ。  市中の商会に入っても、ジェイムズは黙々と仕事をこなし、嘉朗が私に何かあったのかと尋ねて来る程だった。何と言うのか、鬼気迫るとでも言うべきなのか⋯⋯⋯何ものも近寄り難い空気を醸し出していた。  町に一波乱起きるより先に、私とジェイムズに一波乱も二波乱も起きるのではないかと背筋が凍る⋯⋯⋯ 「今夜は別邸に戻るって⋯⋯週末じゃありませんよ?」 「本宅では孫達が居て貴方とのんびり夜を過ごせないし⋯⋯」 「私の為に貴方様がご家族との大切なお時間を減らされるのはとても嫌です」 「今夜だけ⋯⋯お願いだから⋯⋯」  
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