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起きてもまだ不機嫌な私に、ジェイムズは酷く消沈していた。
そんな悲しそうな顔を見せられてもこの憤りは収まらないぞ。そもそも何故みんな私を誰かに託そうとするのだ。自分が見送ってやる、死水は自分が取ってやると言う気概はないのか。誰も彼も私を一人にする事を前提にして。
「旦那様⋯⋯⋯そのお顔は⋯⋯⋯」
「昨夜ジェイムズに虐められたんだ。嘉乃丞も叱っておいてくれ」
珍しく反論もしないジェイムズに、嘉乃丞は「我らの旦那様なのだから大切にするように」とよく解らない説教をしていた。
「目が腫れて……半分しか開いておられません⋯⋯」
「貴方がそうしろと言った通りになった」
「申し訳もございません⋯⋯」
そしてこれもまた珍しく、自分でサイフォンを持ち出し、自分で豆を挽いて、私の好きな苦い珈琲を淹れてくれた。そして自分も苦ーい珈琲に口を付けた。二度と私を泣かさない戒めらしい。
うむ。是非そうしておくれ。
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