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「主さんっ!」
突然の声に振り返ると、東鷹病院の玄関から小柄な青年が一人駆け出して来た。
「主さん……!やっと会えた……!」
帽子を取ったその青年……髪は短く少し日灼けしてはいるが、可愛らしい顔立ちに確かに見覚えがある。白い息を吐きながら頬を上気させ……
「朔夜……其方朔夜か!」
「覚えててくれはった!嬉しい!」
飛びついてきた体は肉が付き、幾分逞しくなっている。嘗て私が買った色子の頃は、もっと華奢で透けるほど白い肌だったのに、一年と少しで……!
「一体どうしてこんな所に!」
「はい!大山の親分さんに拾われて、今はこちらで下働きさしてもろてます!」
輝く大きな瞳が ま こ と 愛らしい。が。
「そうかそうかー。では今は仕事中だね。しっかりと働いておくれ。近いうちにまた会おう」
名残惜しそうなまるい目に後ろ髪を引かれるものの致し方ない。馬車の扉を開けたまま、私の天使がその碧い瞳で全身を刺し貫きそうにじ───っと睨んでおるゆえ………
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