嫉妬深くて何が悪い。

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   視線を感じてふと上座を見ると、旦那様と井作が並んでこっちを見ている。ちょっと目を離したうちにあんなに距離を詰めて……!!油断も隙もないっ!  腰を上げた途端、三原様に呼ばれた。三原様は岳親分と随分親密に話し込んでいらしたけれど。 「立ち働いてばかりいては折角の馳走にありつけまい。其方もここに座りなさい」 「お邪魔させて頂いて宜しいのですか?」 「岳と思い出話をしていただけだ。ほら、この含め煮などとても酒に合う」  三原様は小皿に取り分けた料理と、新しい箸を差し出して下さる。怖いお顔をなさっていても、いつもお優しい。 「市内で評判の料亭から膳を取り寄せましたから。外国人でも舌鼓を打って、とても喜ばれているそうにございます」 「其方は本当に、旦那様の為によく働いてくれる。感謝ばかりだ」 「勿体のうございます」  上座が気になって仕方ない……が……!これもお勤め。旦那様の為にお客人を持て成す事こそが、今、俺が一番に為すべき仕事也り……! 「その昔、旦那様と桐吾殿と三人、この道を馬で駆け下りて行ったものだ。坊主頭の時はすわ山賊の襲撃かと恐れられたりな」 「坊主頭!お城が在った頃にございますか?」  
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